2024年7月に約20年ぶりとなる新紙幣が発行されます。1万円札、5千円札、千円札の3券種が一新され、偽造防止技術の強化やユニバーサルデザインの採用などが図られます。
しかし、この新紙幣への切り替えは、多くの店舗に大きな負担を強いることになりそうです。とりわけ現金での取引が中心の飲食店や小売店では、券売機やレジの入れ替えや改修が必要となります。機器の更新には1台あたり100万円以上のコストがかかるケースも多く、コロナ禍からの回復途上で原材料高に直面する店舗にとって、その費用負担は極めて重いものとなっています。

レジの更新だけで約3.5兆円⁉ 新紙幣対応のレジ更新コストが店舗を圧迫
券売機販売大手のエルコムによると、1000円札のみに対応した券売機の更新には70万円かかります。さらに、5000円札や1万円札に対応させたり、キャッシュレス決済機能を付けたりすると、追加で各50万円かかるそうです。多くの場合、更新費用は100万円を超えるとのことです。


日本国内の小売店舗数は約142万店舗あります。(2007年時点)売場1,000㎡あたりレジ台数は、平均5.8台。
今回の試算では各店舗5台のレジを改修し、1台あたり100万円の費用がかかったと仮定します。
100万×5=500万 一店舗当たり500万円程度の費用がかかったと仮定します。
日本の小売店舗の半数70万店舗がレジを改修した場合に
70万×500万=3.5兆円となります。
3.5兆円とはあくまでレジだけの数字です。ATMや自動販売機も設備の改修の必要があり、費用はさらに大幅に増加します。
特に、多くの個人経営の店舗、中小企業にとって、高額なレジ更新費用を支払うのは非常に厳しい状況でしょう。
中小企業の経営を直撃する多額の投資
中小企業にとって、レジ更新は経営を脅かす大きな負担となります。すでに厳しい経済状況の中、多額の投資を強いられることは、廃業に追い込む可能性すらあります。
- 中小企業の現状
- 多くの中小企業が資金繰りに苦しんでいる
- 新たな投資資金を調達するのは困難
- 経営への影響
- 資金繰りの悪化
- 廃業の増加
- 地域経済への悪影響
- 地方経済への打撃
中小企業の多くは地方に集中しているため、レジ更新による経営悪化は地方経済全体に打撃を与える可能性があります。
物価高への影響 新札移行の費用は消費者に転嫁される
レジ更新にかかる莫大な費用は、最終的に消費者に転嫁される可能性が高いです。すでに低迷している個人消費をさらに悪化させ、物価上昇を招く恐れがあります。

食料品、衣料品、公共料金など、あらゆる生活必需品の値上げは、国民の生活を直撃し、家計を圧迫します。
すでに、2023年以降、物価高騰の影響で個人消費が低迷しています。2023年7-9月期の実質可処分所得は4期連続のマイナス、2024年1-3月期のGDPは個人消費の落ち込みでマイナス成長に転落しました。
物価上昇により家計が圧迫され、支出を抑える動きが広がっています。この状況下で、店舗が更新コストを価格転嫁するのは難しいでしょう。
利益率低下に加え、更新コスト負担は店舗経営を更に圧迫します。個人商店やコンビニなど中小小売店の利益率は1~2%程度と非常に薄く、わずかな負担増でも経営を揺るがしかねません。
また新紙幣への対応が遅れたことによる、システムの故障による営業停止、商機の機会損失といった場合の金銭的影響は無視できません。
新紙幣対応への補助制度 はっきり言って焼け石に水
こうした状況を受けて、一部自治体で新紙幣対応レジへの補助制度を始めています。東京都葛飾区では、更新費用の半額を30万円を上限に補助する方針を打ち出しました。
愛知県大口町は中小の事業者が新紙幣に対応した券売機などに更新する場合に費用の半分を1社あたり50万円を上限に補助する取り組みを行っています。
しかし多くの自治体に補助制度はなく、ほとんどの店舗は全額自己負担で更新しなければなりません。
補助金を用意する自治体でも、1店舗あたり20~30万円程度のケースが多く、レジ更新費用を十分にカバーできるとは言えません。国や自治体による幅広い支援策が必要不可欠です。
支援策の内容
- 金融支援
- 補助金
- 税制優遇措置
課題
- 申請手続きが煩雑
- 支援額が少ない
- すべての企業に行き届かない

キャッシュレス化の進展と新紙幣発行の必要性
日本のキャッシュレス決済比率は2022年に36%に到達し、政府目標の40%に迫っています。

新紙幣発行の目的は主に偽造防止技術の強化とされますが、日本の紙幣偽造は世界的に見ても圧倒的に少ないとされています。
物価高と消費低迷に苦しむ現在、莫大な費用をかけて今すぐ新紙幣を発行する必要性には疑問の声もあります。
20年に1度の紙幣刷新サイクルの見直しで、店舗や消費者の負担軽減を検討すべきかもしれません。
キャッシュレス化が進む中、紙幣依存度を下げていくことも一案だと考えられます。
まとめ 新紙幣発行は今はやるべきではない。はっきり言ってムダ
新紙幣発行という本来は喜ばしいイベントが、経済を悪化させる要因となるのは皮肉です。
政府は国民の声に耳を傾け、時代に合った経済システムを構築する必要があります。
2024年という時代に、紙幣に固執する必要は本当にありますか? キャッシュレス化が進展する現代において、レジ更新という莫大な投資は無駄ではないでしょうか?
2024年新紙幣発行に伴うレジ更新コストは、物価高と消費低迷で苦しむ店舗に大きな負担となります。
特に中小・個人経営店舗や地方経済への打撃が懸念されます。キャッシュレス化が進む中、莫大なコストをかけて紙幣を刷新する必要性には疑問もあります。
物価高、景気の低迷を同時に悪化させる愚策に立憲共産党は反対と懸念を表明します。